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行き場を失った独居高齢者のペットたち
昨今、高齢者の「終活」がブームになっています。自分が亡くなった際の葬儀やお墓について家族に意向を伝えたり、残された子供たちへの財産の相続などを含めた遺言をしたためたり、身の回りのものを生前整理したりなど、自らの人生の終わりにかけた準備を始めておこうという高齢者の方が増えています。
しかし、自らの「終活」の準備は進む一方で、長年愛情を注ぎ、癒し慰められてきた大切な家族であるペットの引き受け先について、しっかりと準備している飼養者は残念なことに非常に少ないようです。
1. 高齢の飼い主に残されたペットたちの現状は?
1―1. 高齢者の死亡後、遺族や親戚から引き取りを拒否されるケース
1―2. 高齢者が病気や入院、施設への入所などでペットを飼養できなくなるケース
1―3. 独居高齢者の孤独死の後、生きるすべを無くしてしまったケース
2. 高齢者がペットと暮らすということ
2―1. 高齢者にとってペットと暮らすメリットとは?
2―2. 高齢者が新たにペットを迎えるときは?
3. いざという時の選択肢として、有料のサービスもあります
3―1. ペットホテルやかかりつけの動物病院を緊急の避難先として利用する方法
3―2. ペットと一緒に暮らせる介護施設を選ぶ方法
3―3. 事業として運営している預り施設を利用する方法
4. 平成25年に「動物の愛護及び管理に関する法律」は一部改正されています
1.高齢の飼い主に残されたペットたちの現状は?
ペットフードの改善や動物医療の進歩により、今や犬猫の平均寿命は15歳前後、私の周りの友人たちの間でも、20歳を超える犬猫と暮らしている人は少なくありません。大切な可愛いペットが長生きしてくれることはもちろん喜ばしいことです。でも、現在の超高齢化社会においては、飼い主さんが高齢となり、最愛のペットが天寿を全うするまで世話をしきれないというケースが増えてきている現実があります。いくつかの事例を見てみましょう。
高齢者の死亡後、遺族や親戚から引き取りを拒否されるケース
独り暮らしの高齢者が亡くなり、その方が長年可愛がってきたペットが残されたとき、亡くなった方のご意向を汲んで、遺族の方などが引き続きペットを引き取り一緒に暮らして頂けるのが理想的な形です。しかし、現実はそう簡単ではありません。仮に、そのペットに性格上も健康上も問題が無かったとしても、遺族や親戚が全員、引き取りを拒むケースは多くあります。引き取りを拒まれる理由は、自分自身も高齢だから、経済的な余裕がない、ペットの使用を許可していないマンションに住んでいる、子供あるいは孫など同居家族に動物アレルギーがあるなど様々です。
高齢者が病気や入院、施設への入所などでペットを飼養できなくなるケース
高齢の飼い主さんともなると、突然の病気やケガ、入院などを理由に、それまでどおりペットと一緒の楽しい生活が続けられなくなるといった問題が起きる確率が高くなります。病気で倒れた一人暮らしの高齢者の方が、その後一人暮らしを続けることに不安を感じ、転居して子供さん家族と同居することになったけれども、子供さん家族の住環境の理由や、家族の動物アレルギーを理由に、子供さん家族からペットの受け入れを断られるといったことがあります。ご自身だけでも子供さん家族に負担をかけると思った高齢者は、自分のペットの受け入れまでは無理強いできず遠慮せざるを得ないのでしょう。
独居高齢者の孤独死の後、生きるすべを無くしてしまったケース
寂しさを紛らわせるように、ひっそりとペットを飼って暮らしている一人暮らしの高齢者も多くいらっしゃいます。こうした独居高齢者の中には、大変悲しく残念なことではありますが、病気などで誰にも気づかれず亡くなられ、その後しばらくたってから発見されることもあります。いわゆる孤独死です。しかし、亡くなられた高齢者の方に飼われていたペットにとって、唯一の家族であるその高齢者の死は、生きるすべを奪われるということに他なりません。孤独死された飼い主さんの傍らで、餓死したペットの遺体が見つかる、そんな悲惨なことが現実に起こっているのです。
2.高齢者がペットと暮らすということ
ペットを最期まで世話できないかも知れないリスクが高いという現実を考慮して、動物の終生飼養の観念から、昨今では高齢者が新たに幼い動物をペットとして迎える際に、ブリーダーやペットショップ、愛護団体などは様々な条件を設けている場合があります。
しかし、高齢者がペットと暮らすことにはデメリットばかりではありません。高齢者が動物と暮らすことには大きなメリットがあるのもまた事実です。
高齢者にとってペットと暮らすメリットとは?
独居の高齢者にとって、一緒に暮らすペットは唯一の話し相手であり、癒してくれる存在になります。高齢の飼い主にとって、毎日ペットの食事を用意し、排せつの処理をし、たまに遊んであげたりすることは、自身の存在意義にもなるし、生きる張り合いにもなるものです。「この仔を最期まで面倒見なければいけないから」という気持ちが励みになって、自らの健康に気を配ったりもします。また、ワンちゃんと暮らしている場合は、ワンちゃんを散歩に連れて行くことが家から外に出るきっかけにもなり、近所の人との会話の機会も生み出します。
高齢者が新たにペットを迎えるときは?
最近は、ペットショップなどでは、高齢の方が新たに幼い犬猫などの動物をペットに迎え入れようとする場合、終生飼養の観点から、迎え入れようとする動物の平均寿命や、飼養にあたってかかる費用、必要なケアなどを説明した上で、更に、もしもの場合にその仔を引き取って世話してくれるかどうか、事前に家族の承諾を取ることを進めるよう販売員に指導しているペットショップもあります。
また、愛護団体などから保護されている犬猫などの里親になろうと思った高齢者が譲渡を希望した場合、年齢制限が設けられており、高齢を理由に断られるケースもあります。これは、悲しい境遇から保護された仔たちが、新しい飼い主に引き取られても、飼い主が高齢のため飼えなくなったなどという理由で、再び悲しい目に合わされることを未然に防ぐために取られている措置です。
3.いざという時の選択肢として、有料のサービスもあります
一人暮らしの高齢者が、もしも病気や入院、施設への入所などの理由で大切なペットと一緒に暮らせなくなるような事態におちいった時、どうしたら良いのでしょう?
まずは、自分の代わりに大切なペットを終生世話してもらえる信頼できる家族、親戚、友人、知人を探しましょう。どんなに頑張って探してみても、世話してくれる人がどうしても見つからない場合、いくつかの選択肢として有料のサービスがあります。
ペットホテルやかかりつけの動物病院を緊急の避難先として利用する方法
自らの病気や入院でペットを一時的に世話できないという場合なら、ペットホテルを利用すれば緊急的な避難先にはなります。また、ペットに持病などがある場合などは、かかりつけの動物病院に一時的に入院させてもらうことも可能な場合があります。
しかし、長期に渡れば、費用面での負担が大きくなりますし、預けられたペットにとっても決して好ましい状態とはいえません。また、あくまで緊急的な避難先であって、その仔を最期まで世話してくれる家族、友人などをできるだけ早く見つける必要があります。
ペットと一緒に暮らせる介護施設を選ぶ方法
自らが介護施設に入ることになった場合などは、最近ではペット可の介護施設やシェアハウスもあり、それまでと同様にペットと一緒に生活することができますが、その分高額になるのは必至です。また、もしも自分が先に亡くなってしまった場合、ペットを引き取って世話してくれる相手を見つけておく必要があることには変わりません。
事業として運営している預り施設を利用する方法
飼い主が高齢になったために飼えなくなったペットの他、高齢で介護の必要なペットなどを引き取り、終生飼養することを事業としている施設もあります。しかし、費用面での負担は大きくなります。さらに、大切なペットと離れて暮らすわけですから、日々ペットの様子を伺い知ることはできません。こういった施設にやむを得ず預けるならば、当然のことながら、実際に何度も出向き、自分の目でよく吟味した上で預け先を決めることが重要になるでしょう。また、預けた後も、自分もしくは家族などに頼んで定期的にペットの様子を確認することが好ましいです。現実的に病気やケガに見舞われてから預り先の施設や定期的にペットの様子を見てもらう家族を探すのでは遅いのです。
4.平成25年に「動物の愛護及び管理に関する法律」は一部改正されています
それまで「動物の愛護及び管理に関する法律」の第三十五条で、「都道府県等(省略)は、犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。」と定められていました。しかし、平成25年に、犬及びねこの引取りについて改正が行われ、下記の但し書きが加えられました。
「ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。」
つまり、都道府県等は、下記の理由の場合、引取りを拒否することができるということです。
1 犬猫等販売業者から引取りを求められた場合
2 引取りを繰り返し求められた場合
3 子犬や子猫の引取りを求められた場合であって、当該引取りを求める者が都道府県等からの繁殖を制限するための措置に関する指示に従っていない場合
4 犬または猫の老齢または疾病を理由として引取りを求められた場合
5 引取りを求める犬または猫の飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合
6 あらかじめ引取りを求める犬または猫の譲渡先を見つけるための取り組みを行っていない場合
7 引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として都道府県等の条例、規則等に定める場合
ただし、上記のいずれかに該当する場合であっても、生活環境の保全上の支障を防止するために必要と認められる場合には、この限りではなく、引取りを行う。
まとめ
「私は病気もケガもしたことないから大丈夫」とおっしゃって、幼い動物を新たに飼おうとする高齢者の方がいます。
もちろん、元気で活き活きした高齢者は多いですし、病気やケガを含め何があるかわからないというリスクは高齢者に限ったことではありません。
しかし、病気やケガなどでそれまでの生活が一変してしまう可能性が、若い人よりも高齢者の方が高いのは事実です。
「今飼えるから飼う、飼いたいから飼う」ではダメ。
犬や猫、その他の動物をこれから家族に迎えようという方は、将来、自分にもしものことがあった場合、自分の後を引き継いで、その仔を終生大切に世話してくれるかどうか、家族や友人と相談してみてください。
今現在、ペットと幸せに暮らしている高齢者の方は、何か起きて追い込まれた状況になる前に、大切な家族の一員であるその仔その仔が天寿を全うする日まで、責任を持って世話してくれる家族や友人、知人を探しておくよう最大限の努力をしてください。
それは、あなたに命を預けた愛犬、愛猫、ペットに対するあなたの果たすべき責任です。
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